変わりゆく腕時計の価値──時代が求める新たな役割と日本のものづくり

変わりゆく腕時計の価値──時代が求める新たな役割と日本のものづくり

私たちの暮らしに寄り添い、ときに人生の節目を彩る腕時計。
それは、時代を映す象徴・技術の結晶であり人々の価値観を映し出す存在です。
今回は、時代の変化とともに移り変わる「腕時計の価値」と「日本のものづくりの可能性」について考察します。

変化する時間に対する意識と腕時計の新たな役割

現代の腕時計市場は、大きな変革の渦中にあります。
スマートフォン・スマートウォッチで誰もが瞬時に正確な時間を知ることができる時代にあって、腕時計の存在意義はかつてなく問い直されています。また、時計を時間を正確に知る道具として購入するのではなく、資産価値として保有する傾向にあり一部のブランドは在庫が間に合わない状態になっています。

その背景には、どんな要因が隠れているのいるのか?

金融不安の時代、資産を守る“現物投資”という選択

高級腕時計は金やプラチナといった貴金属が素材として使われているだけでなく、ブランドの歴史、職人の技術、そして普遍的なデザインそのものに価値があります。
これらは通貨のように価値が希薄化するリスクが低く、インフレに強い資産として機能します。

圧倒的な需要と希少性が生む「価値の安定と上昇」

ロレックスやパテック フィリップといった特定の高級腕時計ブランドの資産価値が高い最大の理由は、その圧倒的な需要に対して供給が著しく限られている点にあります。また、中古市場での価格高騰や投資目的での購入、転売の活発化が需要を押し上げ、正規店での品薄状態が常態化しています。 

デジタル時代における「ステータスや信頼の象徴」としての魅力

スマートフォンで正確な時間がわかる現代において、腕時計の役割は「時間を知る」という実用的な機能から、ステータスや信頼の象徴へとシフトしています。特にビジネスシーンでは、腕時計は“信頼感”や“責任感”を伝えるツールとしての役割を持っています。
ブランドやデザイン、素材の選択が、その人の生き方や社会的ポジションを自然に表現します。

今後の時計産業はどのような変革をしていくか。

デザイン >>> 伝統と革新の調和

  1. ケース形状の変化とサイズの多様化
    かつてはラウンドケースが主流でしたが、近年は四角や八角形、クッション型など、多様な形状のモデルが注目を集めています。
    サイズにおいても、数年前まで主流だった42mm以後の大ぶりなケース形状から38mm前後の小ぶりなモデルといった大きさへとトレンドが移りつつあります。

  2. 鮮やかなカラーダイアルと質感へのこだわり
    クラシックな白や黒の文字盤に加え、鮮やかなレッドやグリーン、ブルーといったカラーダイアルが人気を博しています。また、文字盤に日本の伝統工芸である和紙や漆を用いたり、雪景色を表現した繊細な型打ち模様を施したりと、質感やストーリー性を重視したデザインが増えています。

  3. ヴィンテージ回帰とヘリテージの再解釈
    過去の名作を現代の技術で復刻・再構築する動きは今後も続くでしょう。
    発売当初から独特のケース形状で人気を集めてきた「ベンチュラ(Ventura)」シリーズから、新モデルが登場しました。

技術 >>> 機能美とアートの融合

  1. 技術革新のさらなる進化
    各ブランドは、より薄く、より複雑な機構を備えたモデルの開発にしのぎを削っています。また、セラミックやチタンといった新素材の開発・採用も進み、耐久性や装着感の向上、そして新たな美的表現の可能性を広げています。新しい素材の時計への転化は、発売時にインパクトを簡単にあたれることができる為ブランディング要素として活用されるケースが見受けられます。
  2. サステナブルな技術と素材
    太陽光や室内光で駆動するソーラーウォッチや、リサイクル素材を積極的に活用する動きは、環境意識の高い消費者から強く支持されています。今後も、サステナブルの活用は社会背景に伴い製造メーカーやブランドに求められる分野ではないかと考えています。

消費者嗜好 >>> モノからコトへ

消費者の関心は、製品そのもの(モノ)だけでなく、それにまつわる体験(コト)へと移行しています。ブランドの歴史や哲学、職人の情熱といったストーリーに共感し、購入を決める傾向が強まっています。また、時計愛好家が集うクラブハウスのような空間を提供するブランドも現れ、購入体験そのものが新たな価値を生み出しています。

今後の日本時計産業はどのような変革をしていくのか。

キーワード:美意識と究極の精度

世界的なトレンドが多様化する中で、日本製腕時計は独自のポジションを築き、世界中の愛好家から高い評価を得ています。その強みは、日本のものづくりに根差す「誠実さ」と、世界に類を見ない「美意識」に集約されると言えるでしょう。

1. 日本製ムーブメントの精度と使い勝手
ムーブメントの設計から製造、組み立てまでを一貫して自社で行うマニュファクチュール体制は、日本製時計の品質を支える根幹です。

2. 美を追求するデザイン
日本の時計デザインは、華美な装飾を削ぎ落とし、本質的な美しさを追求する「引き算の美学」に基づいています。主張しすぎず、しかし凛とした存在感を放つデザインは、ビジネスシーンから日常使いまで、あらゆる場面に寄り添います。

3. 自然観と共鳴する美意識
グランドセイコーの「雪白ダイヤル」のように、日本の豊かな自然や四季の移ろいから着想を得たデザインは、海外でも高く評価されています。それは単なる意匠ではなく、自然と調和し、すべての営みを自然の一部として捉える日本古来の死生観や時間意識の表れと言えるでしょう。この情緒的、感性的な価値こそが、日本製時計の大きな魅力となっています。

私たちTokijiにできること


腕時計業界は、今後ますます「伝統と革新の融合」が重要なテーマとなるでしょう。スマートウォッチの台頭は、機械式時計の存在意義を問い直す一方で、腕時計を着けるという文化自体を若い世代に広げるきっかけともなりました。
このような時代において、私たちTokijiは「時を継ぐ」というコンセプトを掲げています。これは単に、世代から世代へと時計を受け継いでいくという意味に留まりません。日本の職人たちが連綿と受け継いできた技術や精神、そして自然や季節の移ろいの中に美を見出してきた日本の豊かな感性を、腕時計という形に変えて未来へと継承していく。
それこそが私たちの使命です。

世界的なトレンドであるサステナビリティやパーソナライゼーションは、ものを大切にし、細部にこだわり抜く日本のものづくりの精神と深く共鳴します。私たちは、この日本の強みを最大限に活かし、持つ人の人生に寄り添い、共に時を重ねていくような腕時計を作り出していきたいと考えています。

腕時計の世界は、奥深く、そして無限の可能性に満ちています。これから自身のブランドを立ち上げようとされている方、あるいは腕時計のデザインや製造に情熱を注ぐ方にとって、本稿でご紹介したトレンドが、新たなインスピレーションの源となれば幸いです。

Tokijiは、時計のOEM(相手先ブランドによる生産)/ODM(相手先ブランドによる設計・生産)を通じて、皆さまの時計づくりへの情熱を形にするお手伝いをいたします。企画・デザインのご相談から、製造、そしてアフターサービスまで、一貫したサポート体制で、あなただけの腕時計を制作いたします。

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